鋳巣|鋳造欠陥の種類から見る『鋳造品で失敗しがちな5つの原因』⑤
鋳造欠陥とは、鋳造工程において起きる鋳造(鋳物)の不具合のことを指します。鋳物の割れや表面の荒れ、内部に空洞ができる鋳巣など、不良現象は様々です。鋳造欠陥はいくつかの種類に分類され、それぞれ異なった原因を持っています。また、鋳造工程が多岐にわたるため原因は1つとは限らない場合もあり複雑なケースがほとんどです。
代表的な不具合は、大きく6個のカテゴリーに分類されます。今回は「鋳巣」の原因と対策から見ていきます。
鋳込み不良 鋳肌の荒れ バリ/突起 鋳物の割れ 鋳巣 ヘコミ
鋳巣とは
鋳巣とは鋳造物の内部に空洞が発生する現象で、代表的な鋳造欠陥のひとつです。
鋳巣はなぜ発生するのか、その対策
鋳巣の原因はさまざまで、溶湯温度の高すぎ、低すぎ、ガスなどによって発生する場合があります。その際、湯道の取り付け方や鋳造条件、特に温度を見直す必要があります。場合によっては、合金自体の特性で鋳巣が発生しやすいこともあります。専門的になりますが、可能であればその合金の状態図で固相や液相を確認する必要もあります。
以下に主な原因とその対策を4つ紹介していきます。
原因1 ガス鋳巣
地金が内包する過多の気体や、鋳造時に気体と溶湯の置換が円滑に行われないために、気体が鋳造物の内部に残留することで鋳巣が発生します。
鋳造前の地金のガス抜きや溶解中に強制的にガス抜きを行います。溶解方法でも改善できる場合もあります。また、焼成温度勾配なども確認し、鋳型内に残渣がないことを確認します。

一般的なガス鋳巣(Pt)

一般的なガス鋳巣(Au)

大量のガスが抜けだした跡
原因2 ルツボから発生するガス鋳巣
ガス鋳巣は、鋳型内に残留するガスから地金に含まれるもの、あるいは材質によってルツボから発生するものもあります。
プラチナの場合、ルツボの中で再溶解することで脱ガスができる場合が多いです。鋳造機で溶解したプラチナをルツボ内で凝固させ、中央に膨らみがある地金にはガスが内在しているので、鋳造前に地金(Pt)を一度溶解してガスの含有がないかを調べることを強く推奨します。
原因3 巻き込み鋳巣
ガス鋳巣の一種で、鋳造時に発生する乱流により鋳型内に内在するガスと流し込む溶湯が置換(入れ替わり)が阻害され、溶湯の渦に気体が巻き込まれるように残留して発生します。
主に遠心鋳造で多くみられる鋳巣で、指輪であれば図1のように指輪の肩から腕にかけて縦方向に連続して発生する特徴があります。
遠心鋳造機の回転数を調整するか、湯道の取り付け箇所を変更してください。

巻き込み鋳巣
原因4 ゴマ鋳巣
溶湯温度の不足で、溶湯が凝固する際に発生するデンドライト(針状晶)の状態で凝固が完了して発生する鋳巣のことです。鋳造物の表層全体に発生しますが、内部でどの程度の空洞になっているか分からないので、鋳巣の修正が困難な場合も多くあります。
鋳型の鋳造温度が地金の鋳造温度を高くします。ゴマ鋳巣が発生している状態により限定的な温度が変わりますが、50℃単位で試すことを推奨します。

一般的なガス鋳巣

デンドライトの拡大写真
原因5 収縮鋳巣
鋳造物が凝固する際に『指向性凝固』※が確保できず、金属の凝固収縮に見合う溶湯の供給が阻害され発生します。一般的には鋳造品の肉厚な部分で発生します。融点が高い金属や収縮の激しい金属で収縮鋳巣のリスクが高く、例えば宝飾品でプラチナ合金では収縮の大きなルテニウム割のプラチナで顕著に発生します。
また、加圧鋳造に見られる鋳巣です。いずれにせよ、指向性凝固を念頭に湯道の取り付け方や太さなどで金属の収縮を補う溶湯の供給を図ってください。

面引けと共に発生した収縮鋳巣

リングに発生した収縮鋳巣
鋳巣の対策まとめ
原因と対策を紹介してきましたが、鋳巣が起こった時の対処法をまとめていきます。
① 焼成温度勾配を確認する
② プラチナ溶解の場合、地金にガスの含有がないか確認する
③ 遠心鋳造機の回転数を調整する
④ 鋳造温度を50℃単位で試す
⑤ 湯道の取り付け方や太さを調整して金属の収縮を補う溶湯の供給をする
原因はひとつとは限りません。すべての項目をもう一度見直して様子をみてください。
鋳肌の荒れ